* お話 *
>>> 「食べる」
「あ、姉は、もうすぐ、きますから」 アレクはそういうと、席を勧めた。アントニオは、一人がけのソファに座り込み、アレクを向かい合わせとなった。 「あの・・・こ、これ、いかがですか?どうぞ・・・」アレクは自分の持ってきた紙袋を開けると、クッキーを出した。 アレクは、ベージュのコットンのパンツに、白いボタンダウンのシャツ。すべて上質な素材でできた服を着ているが、 街を歩いていてこの小柄なそばかすの少年が「教皇」だとわかる人間がいるのだろうか・・・ アントニオは、そんなことを思いながら、進められるままに、アレクの差し出したクッキーを食べた 「おいしいですねえ〜」 アールグレイの紅茶の茶葉が入っている。 素朴なクッキーではあるが、さくさくしていてほどよい焼き加減だ。 「・・・・・ボルジア卿、あなた、いらしてたの?」 麗人の声が後ろから聞こえた。 クリームチーズと生の玉ねぎががたっぷりと入っているほうれん草色したベーグルを半分にし、 アレクの持っているブルーベリーベーグルと交換しようとしているアントニオの背中に向かって、冷たい声が響いた。 「え?ボク?お見舞いだョ。」 悪びれるわけでもなく、ニコニコしながら振り向いて、ベーグルをほおばった。 「聖下のお選びになったブルーベリーもなかなかですねえ」 「ぼ、ボルジア卿のクリームチーズ味も、美味しかったです」 頬を赤らめながらも、まっすぐアントニオに向かっていう。 「あ、それより、このクッキーもさくさくですねえ」 手についたパンくずやら、クッキーのくずを上品に払いながらつまんでいる。 「・・・・・・・・」 なんだか和やかだ。この奇妙な組み合わせにカテリーナはトレーを落としそうになった。 「あ。姉上、美味しいですよ」 「カテリーナも座って、食べなよ。聖下、クッキー焼いたんだって〜」 * next * |