* 駄文*
>>> 注意
アベエス+イオン 帝国への旅の途中だと思ってください。 >>> 手袋
今日最後の汽車が走り出す。 見送り客や、愛を交わす恋人たち、そんな人ごみでごった返した駅のホームを後に、 イオンと、アベルとエステルは、売店で買い物をし、駆け込むように飛び乗った。 といっても、夜行で、一泊する豪華な小旅行・・・・・というわけではない。 帝国への使者として、イオンに同行することとなった二人。 旅は始まったばかり・・・・・・・・といいたいところだが、 出だしから、汽車のチケットを取り間違えてしまった。 たとえ、紫外線効果ジェルがあるとはいえ、 イオンのことを思い、昼間は、なるべく汽車の中ですごし、夜行動、というパターンを 考えていた二人であったが、汽車は、今日の夜行、最終便・・・・・ 次の街への到着は、明日の朝、8時・・・・・ イオンは、神父の格好をしている。 尼僧と、神父とイオンのような民族衣装の3人が旅行していたら、不便ではないか、 あやしまれやしないか、というミラノ公の配慮により、その僧衣があつらえた。 そして、帝国入りをしたときを考えて、おのおの、士民服まで、あつらえてある。 軽い木の扉をあけ、その部屋へ入る。 粗末な部屋にびっくりするイオンではあったが、とりあえず、 「余ハきにせぬぞ。しかたあるまイ」 イオンはなんとなく、この先の行く末を心配しながらも、二人を気遣う。 とくに、あのへっぽこ・・・・・ そもそも、汽車のチケットの取り間違えもあのへっぽこ神父のおかげだ。 部屋は2等車。 ソファもかねた二段ベッドが4つ。アベルの身長を考えると、 なんとか、その天井まではぎりぎり間に合う高さだ。 アベルは、果たしてその長躯を横に眠ることができるのだろうかと考えてしまうようなソファベッドである。 イオンはそんなことを心配しながら、部屋を見渡す。 しかし、イオンの心配をよそに、等のアベル本人は、 「エステルさぁああん、おなかすきました。もう、駅の売店しまってたし・・・・・」 と訴え、僧衣のポケットをごそごそしだした。 すわりごごちの悪いソファベッドにイオンは腰掛けると、窓の外の暗闇を眺めた。 そして、ついこの間まで起こっていた事件のこと、そして、その夜の暗闇色が あの、髪の色に似ていることを思うと、やはり、やりきれない胸の痛みを感じた。 ・・・・・・ラドゥ・・・・・・声にならない声となる。 「閣下」 その思いを吹き飛ばすかのようにエステルの声がした。 「アベル神父様のせいで・・・・ごめんなさい」 「アっ、いや、まぁ、気にせぬゆえ・・・」イオンがエステルを見つめて言う。 、エステルはイオンの隣に腰掛けると、アベルと向かい合わせになった。 そんなやりとりも気にせず、アベルは、まだ、ポケットやら、かばんをごそごそして、食べ物を探している。 しかたなしに、エステルは「やれやれ」という表情を浮かべると、 先ほど、店がしまる直前で買った板チョコをアベルへとさしだした。 「えええ。エステルさぁぁん、ありがとうございますぅぅ」 アベルは満面の笑みを浮かべて、板チョコの紙をびりびりと破きだす。 そんなアベルの姿を苦笑しつつ、隣にかけたイオンの僧衣のケープを脱ぐ作業をを手伝い、たたんだ。 その間も、アベルはエステルの与えた、チョコレートに夢中でかじりついている。 「エステル、今日はもう時間が遅いが・・・・・・・・」 イオンは言うが、エステルは 「いえ、こういうことは、毎日が大事ですわ」といい、イオンの隣で帝国語の発音練習をしだした。 簡単な会話、それから、ちょっとした詩が書かれたノートを手にしている。 それは、イオンが自ら丁寧に書き留めた帝国語の文字である。 たどたどしいローマ公用語と、帝国語が小さな声で飛び交っている。 アベルは向かい側に座り、その長躯をなんとか曲げて、二人をみつめていた。 そして、ある感情がわいてくることにきがつきつつあった。 ・・・・・・・・私に、まだ、こんな感情があるとは・・・・・・・・・・ そう思うと、白い十字の手袋を脱ぎ捨て、ケープをはずし、きちんとたたむと、 二人の発音練習を黙ってみていることの居心地の悪さを思い、 「私、なにか、おなかすいたので、ちょっと・・・・」とぶつぶついいながら、部屋をあとにした。 つづく |