□ ミニスカート □
なにやら気まずい雰囲気で、お茶が運ばれた。ケイトはそ知らぬ顔でさっさと通信を切り、
高みの見物ときた。
アントニオは、カップを片手に、ベッドの際に腰掛けると、
「ハニィ、これ、これ。お茶だけじゃ、ハロウィンにならないでしょ」
と、大きな包みを渡す。あけると例のスカートと毛糸のパンツが入っていた。
かみそり色の瞳がそのショッキングピンクの熊のパンツへと注がれる。
アントニオの独壇場に、それぞれ勝手にお茶をする。
イオンとアストは、全く、短生種とは命が短いだけあって、濃密なことをするものだ、
とある意味、感心しつつも、帝国貴族としての誇りだけは失うまい、と心に誓い合う。
ペテロは、「ふ、婦女子たるもの・・・」といいながらも、興味ありげに、そのスカートを見る。
「ああ、そういえば、ミラノ公は、いつも、長い法衣を身にまとっていたなぁ」
しみじみ思い出す。
「しかし、短いですわね、かわいい〜」エステルはスカートを見てニコニコしている。
エステルの隣で覗き込むアベルは
「ああ、私、カテリーナさんとは長い付き合いですけど・・・そんな短いスカートはいたところは
見たことありませんねえ・・・・・・」
となぜか,眼鏡を押し上げて、しっかりと、目線はピンクのパンツに向け、回想する。
「そういえば、某も・・・・」なぜか、賛同するペテロ。
「お人形さんのような美少女だったとはいえ・・・ねえ、はきませんでしたよねえ??
カテリーナさんっ」
アベルはまるで、幼馴染の可憐だった頃を思い出すかのように、にやけて言う。
それを横目でにらむエステル。そして、足が踏まれる。
「あわわわ。え、エステルさん、怒ってます??」
「別に怒ってませんけど、なにか?」・・・
いや、怒ってるって・・・と突っ込みをいれるのを忘れて、カテリーナはまだ、固まっている。
しかし、目がなんだか、輝きをましてきているのを、アントニオはちらりと見て、
「カテリーナ、ボクはねえ、君がそのハイヒールでこつこつと歩いていた姿を思い出すよ。鍛えられた、その足を・・・・・・・・」
というところで視線を感じたアントニオ。
なぜか、無表情にもかかわらず、先ほどよりもまして、温度が下がっている人間、いや
機械化歩兵がいる。
「卿らは、何を考えている。これでは、ミラノ公の健康にさしつかえる。すみやかに退出を」
「ええ、だってこの部屋空調利いてるし。別にスカートになっても・・・ねえ、ペテロさん」
アベルは思い切り足の小指を踏まれて、痛々しい顔をしながらも、ペテロに話をふる。
「あわわわ、いや、某にふられても・・・・・・・・・・のう、マタイ」
マタイはパウラとゆっくりお茶をすすりながら、
「この部屋は禁煙ですよねえ」
「当たり前です」と勝手にパウラと話し込んでいる。
「・・・・・・要するに、私がこのスカートをはけばよいのね」
カテリーナはかみそり色の瞳をらんらんとさせながら、目線は熊の方へと向かっている。
「・・・・・・・ミラノ公、風邪がひどくなる。それは推奨できない」
平坦な声が響く。
「じゃ、トレス君、きみがはきなよ」
アベルと、アントニオの声が重なった。にらむエステル。
イオンとアストは、顔を向き合わせて、「??」となる。
「・・・・・・・・・ミラノ公に被害が及ぼすくらいなら、俺がはく」
「よ、それでこそ、男だねえ、人間だねえ」
「俺は人ではない、機械だ」
荷物を抱えて、トレスは隣の部屋へと消えてしまった。
アントニオは自分の策が全くもってうまくいったことに、この上ない喜びを感じ、トレスの姿を
見送った
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2005.8