□ ミニスカート □

その日、エステルは、小さな黄色い薔薇とパンプキンパイを持って、カテリーナを見舞った
「いらっしゃい」
カテリーナはベッドから起き上がっていた。
ベージュにグレーの水玉のシルクの寝間着を着ていた。トレスがさりげなく、オフホワイトのカーディガンを 手渡し、それをゆっくりと羽織ると、エステルに、かみそり色した温かい目線を送る。

「カテリーナ様、ジェーンさんからですわ、一緒にお茶にしませんか?」
トレスはエステルから、薔薇を受け取ると、花をいけにそっと、部屋の片隅で水切りをする。
「まぁ、美味しいそうですね。」

そこへ、大きな音がし、ドアがあく。
身長2mの巨漢と190cmのやせぎすの青年が、妙な格好で立っていた。
かぼちゃの細工を片手に。

「ひぃ」
エステルは声にならない声をあげる。
そして、まじまじと見つめる。

「ぺ、ペテロさん?」
真っ白なシスター服に身をつつみ、水色の美しい髪はきちんと
コイフに入っている。おそらく、パウラが編みこんだのだろうか。
そして手には、「まごごろのおみまい」と美しい文字が刻まれた籠がある。
どうやら、その文字はアントニオの文字に見えなくも無い。
大きいはずの籠も2mの身長ではこじんまり見える。
そして、その隣は、アベリーナだ。しかも、見習いの印、ブルーのシスター服である。
見覚えのある姿に、思わず、噴出す。
「アベリーナさんが、なにか、御用かしら???」

カテリーナは、こめかみに手をあてて、目をしばたきさせた。
そしてしっかりとペテロから籠を受け取る。

すでに、なぜか、ハロウィンの仮装のはずが、全くそれを無視して
白衣のマタイ、それに、あわせるかのようにナース服で冷ややかな目線を送るパウラ、
たてロールを巻かれて、前身ごろにレース、袖にもレース、おまけにアタマにはクラウン。 白いタイツに、かぼちゃのようなパンツを履いた絵本の王子のようなイオン、その後ろには、
アベルの僧衣に身を包んだアストがいた。そしてなぜか、マスクをしている。
(この服におう・・・・・・)目は、そんなことを言っている。

全く普段と変化ない服装、真っ赤なシャツに真っ黒いジャケットと、パンツでアントニオが入室する。
そして、大きな包みを抱えており

「いたづらしちゃうよ」
・・・・・・・・・・・・・・・・
この薄らら寒い、お互い目線をあわそうとしない集団に、カテリーナは、
もう目も口も開きっぱなしになってしまい
「ケイト??あの・・お茶を・・・・・・8人分ほど・・・・」
と通信していた。

そこへ、黄色の薔薇をきちんと真っ白な磁器に生け、大事そうに抱えたトレスが、 アントニオに目線を送りながら、言う。
「卿たちは、なにをしたいのだ?回答の入力を」

平坦な声というよりも、冷め切って、もう氷点下以下である。


* next *


2005.8