* お話 *

>>> pink 

店員は、手際よくラッピングをし、ちょっとしたプレゼントができあがった。 荷物をトレスが受け取る。

 あの・・・お客様・・・・
 今日で、お店が5周年なんです。これは、ささやかな気持ちです
店員は、二人を呼びとめ、手のひらサイズの小さな箱を二つ、カテリーナに 手渡そうとした
  カップルでおいでの方にこちらを差し上げています

カテリーナは、高級なレストランで食事を終えたときと
同じように、
 「どうもありがとう」
とお礼をいい、上品な笑顔を見せながら、そのチープな小さな箱を受け取った。

隣の小さなカフェに二人は入ると、
プレゼントを貰って待ちきれないような子供のように、 カテリーナは、小さな箱を開けた。
 「お行儀悪いかしら・・・・」
といいながら包みを開くと、
それは、カーヤの割れてしまったマグカップと 同じキャラクターのクマのフィギアだった。
全く同じ物が二つ。
10cm程のサイズだが、手足がくるくると動く。
そして、爪が長く、片手には、やすりを持っている。
 「爪・・・・・とぐのねえ」
小さくても、精密にできている、その小さなおもちゃを 長い指がもてあそぶ。
手のひらに載せたり、爪を研ぐふりをさせたり。
物珍しそうに、さわって遊んでいる。
そんなカテリーナをトレスは、黙って無表情に見つめていた。

 「トレス、このクマ、あなたの今日の服装に良く似合うわ」
 「・・・・卿の発言は意味不明だ・・・・なぜ俺に似合うんだ?
  回答を」
回答をする前に、カテリーナは、そのクマを自分のケリーバッグに つけてごまかした。
細かい作業の苦手な彼女は、もたもたしている。
その間に、トレスは店員を呼び、カフェ代を支払った。

 「ミラノ公、
  明日は、朝早く、メディチ卿との会議がある。
  もう、帰宅して、休むことを推奨する」

  「そうね、帰りましょうか」
とカテリーナは少し名残惜しそうに言うと、
もう一体のクマをトレスのジャケットのポケットへ押し込んだ。
「これはあなたのものよ。トレス」
と微笑む。
「俺は・・・これを??(どうしろというんだ??」と 言わんばかりの顔になっている(ような気がする)
「今日のお礼だわ」
「・・・・・・無用。卿の護衛も兼ねているから」

カテリーナは、トレスのポケットに入れた手をそっと出すと、
二人は店を後にした。
来たときとはちがい、二人は並んでゆっくりと石畳を歩く。

空が桃色から茜色に染まりつつあった。
日が沈む。もうじき、夜の帳が下りるだろう
ゆっくり、ゆっくりと、二人は、茜さす帰路を歩いた。

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