* 駄文*

>>> 注意

CANONネタバレ。カテ様の病が悪化中。カテ様にいちゃんが、すげーことしようとしてます、    
そのあたりかと。
>>> 手袋 4


薬の副作用で、かつての真紅の麗人の姿は、変わり果ててしまった。
白い磁器のような頬は朱く、むくむ。
すこし薄くなった金の髪。爪は貧血のために、すこし変形してしまった。
かみそり色の瞳は、かつての鋭い光を宿してはいない。どんよりとした、にぶい、つかれきった色をはなつ。

にもかかわらず、こうして、リハビリを続け、どうにか、立てるようになったのは、
彼女の努力はもちろんのこと、固い決意、
そして、なによりも、となりで静かに佇む一体の機械化歩兵、
いや、一人の男の存在なのかもしれない。

カテリーナ・スフォルツアはその白い部屋の窓辺に静かに暮らしていた。
上げ下げ式の木製の大きな窓からは、遠くかなたに海が見える。
今の彼女の生活にとってはすべてがこの白い部屋。
介護用のおおきなベッドをおき、いつでも、外をみられるようにと、カーテンを閉めずにいた。
枕元には、まだ、14歳だったころの自分とその仲間たちの写真が飾られている。


車椅子から、ゆっくりと、ベッドへ移動する。この作業も、ついこの間までは、できずにいた。
その写真を手に取り、また、枕元にそっとおき、写真を伏せた。

部下にして同士、友にして、家族・・・・・そして、最愛の男がいた・・・・
自分の大事な大事な宝物をなくして、どのくらいたったのだろうか・・・・・・・・・


  「ダメージレポートを。」
ひどい咳とともに、口元や鼻、全身からなにかが吹き出るような感覚にみまわれ、身体が前かがみになる。
駆け寄ったトレスは、手馴れた手つきで彼女を支える。
支えたトレスの白い手袋に朱色の血液がが飛沫する。


「大丈夫です、トレス」

血液が飛沫した手袋を取り外すと、トレスは、とりあえずその手袋で彼女の顔についた血液をふき取る。
そして、まだ残っている口元の小さな染みをその指でぬぐった。
カテリーナは、その機械の手をそっとふれると、頬にその手をあてて、彼の手の温かみをゆっくりと感じとる。

「睡眠をとることを推奨する。俺は、薬をもってくる」
というと、ゆっくりとベッドへ寝かせ、隣の部屋へ向かおうとした。

「トレス・・・ケイトが煎れてくれた、カモミールの入ったお茶のレシピ、覚えているかしら?」
トレスは、主の声に反応し、奥のほうに書き込まれていたそのレシピを思い出し、
自分へ向けているかみそり色の瞳をじっとみつめた。

それから、数分後、薬とともに、温かいお茶が一緒にはこばれてきた。
その香りは、ケイトが煎れたものと、寸分たがわない。
でも、カテリーナにとっては、もうすでに、かわりつつあるのだ。
トレスは手袋をしていない手でゆっくりと主を抱き起こすと
彼女のお気に入りの薔薇の絵のカップを手渡した。

温かいお茶と一緒に心の奥のほうから、沸きあがる、柔らかな思いとともに、固い決心がやどる。
そして、いつだったか、かつての同士に言われた言葉を思い出す


 「あなたにあるのは、復讐心だけだ。
  そんなあなたに弱い人の心など、わかるはずがない」


ごめんなさい、ハヴェル。まだ、私には、わかりたくはないの。
そして、まだ、あなたの元には、まだいけません。
この忠実な猟犬であり、たった一人、そう、一人だけ残されたこの男とともに、
私は、私のすべきことを、これからもまだ、続けるつもり。
時間が許す限り。
この男は、ずっと、私と行動をともにしてくれるだろう。
いえ、この男でないと・・・・・・・・・・・
カテリーナは静かに、かみそり色の瞳をその男に向けた。