* 駄文*
>>> 注意
ジェーンとメアリが出てくる中島らもにささげられない代物不健康話。 酒と薬まみれなので、ご注意ください。 >>> 手袋
確かに、金髪碧眼の少年の後ろには、双子の姉なのか、妹なのか・・・・ 赤毛でソバカスだらけ、瞳の色だけが、かすかに、この少年の肉親だと思われるそっくりな 色をした少女がいた。お世辞にも美少女とはいえない。 「あの、赤毛ちゃん、20歳すぎたら、とびきりの美人になるわよ」 こんなときのジェーンの予想はたいていあたっている。 今日のメアリは、長きにあたり友であり、ほぼ、幼馴染のような存在でもある、ジェーンというよりは、 ジョスリンコンツェルンの「ジェーン・ジュディス・ジョスリン」のSPをしていた。 男装の麗人の服装で、外からも、中からも、この大企業を守るために、総司令官として、仕事をしていた。 彼女のために・・・・・・・・・ すべてが終了し、「よいものが手に入ったから」というジェーンの一言でこのスイートルームに やってきたのだった。 もちろん、ワインのことではない。 メアリは胸元を少し緩め、まだ、あけていない赤ワインをあけた。 「でも、もう、帰っちゃうのよねえ〜。まぁ、取引あるから、また会えるけどぉぉ」 錠剤がまわってきたのか、いつもの甘い声がますます、あまったるくなる。 ジェーンは、おもむろにはいていたピンヒールの留め金を震える手ではずすと、床に投げた。 そして、黒いグローブの両腕をメアリの前へ突き出す 「私にどうしろと、いうのだ?」 メアリは、ワインをボトルごと飲みながら問う。 「ん〜まずは、これ、はずしてぇ」 椅子からやっとの思いで起き上がる。 メアリはひざまずくと、大切なものを扱うかのように、 そっと静かに、その上質なシルクのグローブをゆっくりとはずそうとした。 さすがに、「よいもの」のおかげで、多少なりともメアリの手もおぼつかない。 とろけるようなまなざしでジェーンは、メアリのしぐさを見るが焦点があってはいない。 グローブをやっとの思いで脱がすと、そっと床へ落とした。 形のよい、よく手入れされた長い爪は桜色をしていた。 白い、程よく鍛えられている腕。 疫病神ジェーンというあだ名を持つ彼女ではあるが、結局は、血では汚れてはいまい。 そう、あの女の姪なのだ・・・・・・・・ 「めありぃぃぃ」 はっと気がつくと、よろよろと、立ち上がり、そのやわらかい指の腹が彼女の手袋を触る。 そして、メアリの手袋を脱がそうと懸命だ。しかし、手が全くおぼつかない。 仕方なく、メアリは自ら手袋をはずすと、立ち上がり、彼女を支えようとする。 ジェーンはそれを振り切ると、ろれつの回らない声でゆっくりという。 「ねえ、踊ろうよぅぅ、よく、二人で練習したよねえええ」 あのころはあまり身長の差がなかったから、互いに、、男女役をよく交代で やっていた。今はいうまでもなく、メアリのほうが背が高い。 つきあってられん・・・・・ メアリはあきれつつも、ジェーンのその申し入れを断ることができない。 よろよろとしながらも、ジェーンはいつものように踊る練習もさることながら、 「殿方を惑わせるための優雅なお挨拶の仕方」を練習する、と、 真剣に悩み、何度も、何度も、メアリ相手に遊び半分、真剣半分でドレスのすそを広げ、お辞儀をした、 あの幼き日々のことを思い出すかのように、彼女は、声を出す。 「踊ってくださる?」 そして、ドレスのすそは、美しく広がり、その言葉は、はっきりと発音され、優雅に挨拶をした。 「よころんで」 メアリはそういう。 ジェーンは自分の大好きな曲を小さく口ずさむが、それはほとんど、音階をなしていない。 メアリだけが、知っている。 あのころから、彼女がよく口ずさんでいたのだ。 巻きついてきたジェーンの腕を払うことなくそのままにしておく。 ステップは踏めないくらい、どろどろとなったジェーンは、身体をメアリにあずけた。 また、オーバードーズか・・・・・・ とつぶやくと、酒と錠剤がまだ、ほんの少ししか、まわってきていない己をのろいつつも、 そっと、抱えて、ベッドに運びこみ、絡みついた指をひとつづつほぐし,寝かしつける。 「めありぃぃぃ、大好きよ」 そういうと、静かに寝返りをうち、寝息を立て始めた。 濡れた唇が、なにかをいいかけている。でも、それは、言葉にならない。 規則正しい呼吸と、ゆれる長い睫。 オーバードーズしたときの彼女の顔は、無邪気で無防備だ。 そして、その声は、何も知らない、子供のころと変わらないような気がする。 床に置かれたシルクのグローブをそっとたたみ、脱ぎ捨てられたヒールを そろえると、メアリは部屋を静かに後にした。 廊下にでると、視界がゆがんで見え出した。効いてきた酒と錠剤。 この分だと、部屋まで早く、引き上げなければまずい。 「ねえ、ジェーン。私もあんたのこと、大好きだよ」 朦朧とし始めた意識の中で、メアリは静かに部屋を跡にした。 |