■ 駄文 ■

体調不良 


「局長を見ていてもいいのですよ」
マタイは机ごしに、パウラへとにじり寄る。机と、その上の書類が唯一の堤防。

「ただ、あの人、全くあなたの存在にきがついてません」
絶望的な一言で、私にとどめをさす。そんなことはわかっている。
でも、言葉にはならない。そして、この男もまた、あの水色の髪を愛しているのだ。

「局長の本命はあの、長生種ですから」
また、何をいってんだ?これは、この男の冗談なんだろうか?
今、笑っていいのだろうか??黙殺して、書類へと視線を落とす。
その書類を取り上げて、床へと投げ捨てると、
穏やかを絵に描いたような顔が目の前にある。
しかし、その細い瞳の鈍い光は、多少なりとも、怒りがやどっている。

「ブラザーマタイ??」

気がつくと、目の前にその視線が。
さらに、机の上の書類は無残にも、床へばら撒かれた。
右手から、羽ペンを奪われ、机の上へとおかれる。
空っぽになった手首をつかまれ、自分の口元が強引に薄い唇にふさがれる。
自分の体温とは明らかに違う、生ぬるいものが唇を割って入ってきた。
絡められるのかと思いきや、舌先が少し舌下に触れただけで、開放される

  「部屋に帰って寝たほうがいいのでは?結構、熱出てますよ」

してやったりの表情にむかつきつつも、
  「ご忠告ありがとう」
言葉を失う。どこまで、この男は本気なのだ?

 「局長を見つめているあなたが私は好きですから」
私の右隣へとやってきて、
ご忠告もなにも、とつぶやくと、どけ、といわんばかりのまなざしで、強引に私を立たせ、
その椅子に座り込む。
 「これは、私が局長に、届けます」
にやりと笑う。
「それとも、部屋まで、送りましょうか」
2005.8up